2009/10/6 朝日新聞 酪農家、EU本部にトラクターで抗議 乳価下落に反発
【ブリュッセル=井田香奈子、パリ=国末憲人】欧州で乳価が落ち込み、怒った農民が各地で牛乳を廃棄する騒ぎに発展している。欧州連合(EU)は5日、緊急農相理事会を開いたが、小規模酪農家が多い仏独などが保護政策を求める一方、集約化が進む国々は自由化を見越して反対している。
ブリュッセルのEU本部周辺には同日、各国の農民がトラクターで乗り込み、「対策をとらなければ生産を止める」と気勢を上げた。
余った牛乳を街路や田畑にまいて抗議する動きが9月から広がっており、世界遺産・仏モンサンミッシェル近くの平原で200万リットル分をまいたり、独仏国境の橋からライン川に流したりしている。
9月時点の乳価は1リットルあたり0.2ユーロ程度の国もあり、0.4ユーロ程度といわれる生産コストを大幅に割り込んでいる。酪農が盛んな仏西部マンシュ県議会のルグラン議長は仏メディアに「農家で自殺が相次いでいる」と告発した。
EUは、牛乳生産量の上限を国別に割り当てるクオータ制と補助金で酪農を保護してきた。ただ過保護との反省から昨年、生産量を毎年1%ずつ増やしクオータ制を15年までに廃止することで合意した。
欧州委員会は「乳価下落は経済危機によるもの」としているが、酪農家らは、自由化措置が乳価下落の原因と批判。突き上げを受けた仏独などがクオータ制の当面の維持を主張し、加盟27カ国のうち20カ国程度の賛同をとりつけた。一方、大規模化が進むデンマーク、イタリア、スペインなどは自由化に向けて生産量拡大を求めている。 |